『アクセンチュア流 逆転のグローバル戦略』

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『アクセンチュア流 逆転のグローバル戦略』
西村 裕二 著 英治出版 発刊


全世界で18万人の従業員を抱えるグローバルファームであるアクセンチュア社の執行役員(当時)である西村裕二氏の著書『アクセンチュア流 逆転のグローバル戦略』(2009年11月15日発刊)でOneSourceを出所とした情報をご活用頂き企業間の財務分析資料を作成されたグラフを掲載頂きました。
効果的なグローバル展開を考えている多国籍企業や、企業の海外展開を支援するコンサルティング会社の方が多く訪問される当サイトでは、海外戦略を考える際にご参考頂ける書籍としてここにご紹介させて頂きます。

西村裕二氏 略歴(本書から抜粋)
アクセンチュア株式会社
執行役員 経営コンサルティング本部統轄本部長
大手化学会社を経て1990年アクセンチュア入社。米国での経営コンサルティング経験を経て、帰国後、日本にて製造流通業、通信ハイテク業界を中心に数多くのコンサルティングに従事。特に、多極化世界に対応した日本企業のグローバルでのM&Aを含めた成長戦略を得意領域としている。製薬業界 アジア・パシフィック統括、戦略グループ統括を経て2006年経営コンサルティング本部統括に就任、(2009年から戦略グループ アジア・パシフィック統括を兼任し)、現在に至る。共著に『バリューネットワーク戦略』(ダイヤモンド社)、『サプライチェーン理論と実践』(ダイヤモンド社)等。またその他公園、論文、寄稿等も多い。


本書が発刊されたのは2009年であり、4年後の現在とは多少外部環境は異なります。しかし、本書の中心に据えられたテーマである「日本企業が今後どのようにしてグローバル化を推進していくべきか」「海外のハイパフォーマンス企業はどのようにしてハイパフォーマンスとなりえたのか」といった点について述べられている事例や提言は2013年の現在においても色あせることはありません。それどころか、本書での的確な指摘を読むにつけ、4年間の間日本企業は何をしていたのだろうという思いにかられます。
西村氏自身、世界150都市18万人の従業員を抱え、且つ世界中のハイパフォーマンス企業のベストプラクティスを作り出し、実行し、自社に取り入れているアクセンチュア社において勤務しており、アクセンチュア社自身の事例も含めて世界中のハイパフォーマンス企業の戦略分析を展開しています。

グローバル経営力5つの要素

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グローバル経営力5つの要素
(本書61ページより)


本書ではハイパフォーマンス企業の特徴として、「スケールとスコープの獲得」と「本社の高いコントロール力」が重要な特徴であると紹介しています。「スケールとスコープの獲得」では、地理的な拡大と消費者の深堀りを行い、その後に事業プラットフォームを地球規模で構築する必要があり、また「本社の高いコントロール力」では強い本社ガバナンスにより、本社がグループ全体の経営資源の配分を行い、効率性と全体最適を追求することが必要であると述べています。
またグローバル経営を成功させる5つの要素として、「市場創造展開力」「M&A力」「ものづくり力」「グローバルオペレーション力」「経営管理力」といったポイントを挙げています。ここで簡単ながらこれらの5つのポイントについて解説させて頂きます。(これら5つのポイントはアクセンチュア社により提唱されているものです。)
「市場創造展開力」                    
新しい市場に新しいビジネスモデル、チャネル、インフラ投資により展開する力
「M&A力」          
M&Aを活用して新たな製品サービスやチャネルを獲得する力
「ものづくり力」       
低価格で消費者ニーズに合ったオシャレな新製品を続々と市場に出す力
「グローバルオペレーション力」
国境・組織を超えてスケールメリットを追求。業務標準化、IT化により業務効率、スピードを追求する力
「経営管理力」                               
国境・組織を超えた経営管理と人とイノベーションの流動化
これらの5つの要素が、グローバル経営力に必要な要素であると述べられています。本書では、ノキア社やサムスン社等世界のハイパフォーマンス企業の実際の事例を紹介し、これらの要素のそれぞれについて日本企業が陥りがちな問題について指摘し、それに対する対応策を紹介されています。

グローバル経営を成功するための要素〜共通化したITシステム投資が重要

今回、上記に紹介した5つのポイントで、もっとも印象に残ったのが、「グローバルオペレーション力」について述べられた箇所でした。本書では、グローバルオペレーションの例として、アクセンチュア社の事例を取り上げています。
アクセンチュア社では2000年頃に日本・韓国・中国のオペレーション業務(例えば請求書発行等のトランザクション業務)を大連に集約したそうです。オペレーション業務移管の際には、様々な不便も生じたようです。例えば、あるアプリケーションが使えなくなった場合、今までは同じ会社内のIT担当者に対応させ、自分では手を動かさずに済んだものを、大連への業務集約後は修理には多大な時間が掛かるようになったとのことです。しかし、半年もすれば、オペレーションを集約化させたことにより、業務が高度化・効率化していったとのことです。これは、一つの拠点(大連)にオペレーションを集約させたおかげで、様々な拠点の様々な事例を横断的に多量に取り扱うようになり、その結果本来は複雑であろう業務も簡単にこなすようになったとのことです。このように、オペレーション改革とは、業務スピードを向上させ、強いビジネスモデルを作ることであります。
また、ハイパフォーマンス企業のグローバル・オペレーティング・モデルは、「グローバル・ワン・システム」から始まり、これらのオペレーション・プラットフォームにローカルのニーズやアイデアを反映させているようです。(これを「スーパー・グローバル・オペレーション」と呼ぶようです。)

情報システム化を細かい単位で行なうことは危険であり、グローバル共通で「同じシステム」を使うことが重要である。細かな単位での情報システム化ではなく、グローバル・スケールでオペレーション業務を集約し、情報システムの活用によって標準化された業務をさらに自動化・セルフ化することでのみ、大幅な効率化とスピードアップが実現できるのだ。(本書 194ページより)

ここで西村氏が本書で紹介したのは、分割化とオペレーションの集約化、およびその結果による業務スピードの向上について述べられています。しかし、経理処理や問い合わせ対応等のトランザクション業務のみならず、さまざまな分野で全社的に「同じシステム」を使うことのメリットは計り知れないと思います。
たとえば、セールスフォース・ドットコムのように、クラウド上で顧客管理や売上管理を行なうことが出来るシステムを全社的に導入すれば、導入時は様々な反発が予想されますが、導入後は世界の各拠点の顧客や売上を可視化することが出来ることでしょう。このような様々なメリットがあるため、セールスフォース・ドットコムは世界で10万社以上の企業に導入されています。(*1)
また、OneSourceのデータベースにつきましても、主要なコンサルティング会社や多国籍企業等で各拠点毎に利用頂いており、世界で3500社が利用するデータベースとなっています。同じシステムを多拠点で利用することにより、企業を調査する際に本社が中心となって情報取得をしたり、あるいは本社と子会社が共同で調査・分析を行なうことが可能となっています。
共通のプラットフォームを世界の拠点で同じように利用することによって、拠点間の共通の調査能力・問題解決能力だけでなく、コミュニケーション力(理解力)も改善できる効果があるのではないでしょうか。OneSource自身、世界のハイパフォーマンス企業に愛用頂いているサービスであり、世界での利用実績を踏まえ、各拠点の担当者がより使いやすいデータベースとなるよう日々開発を進めています。
なお、このグローバル・オペレーション力以外にも、本書では、ハイパフォーマンス企業のグローバル戦略についての分析を踏まえ、日本企業が今後どのようにグローバル展開をしていくべきかを詳細に記しています。今回ここではあまり紹介しておりませんが、多極化世界のM&A戦略や経営管理力の章でも、アクセンチュア社含め世界のハイパフォーマンス企業がどのように組織運営をしているかという話があり、当社としても大変参考になりました。
グローバル化戦略について考えている企業経営者、及び現場担当者は是非ご一読されることをお勧めします。

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OneSourceを活用した企業財務分析
(本書 44ページより)


(*1) 顧客企業数はWikipediaより転載

書籍の紹介

タイトル:アクセンチュア流 逆転のグローバル戦略 ローエンドから攻め上がれ
発行日 :2009年11月15日
著者  :西村 裕二
発行  :英治出版
サイト :こちら
 

参考情報